店主が語るこのつくり手の魅力

錫師 | 錫光

「現代の名工」の技を継ぎ、さらに新たなチャレンジを続ける

錫師 | 錫光

東日本最後の錫師。「現代の名工」に選ばれた先代の技術・意匠を受け継ぎ、会社員を辞めて錫の世界へ。量産品やプラスチックが主流になっていく中、錫の良さを最大限に活かす手仕事にこだわり「錫光」を継ぐ。若手デザイナーとのコラボ、外務省からの依頼による海外進出など、時代のニーズにも柔軟に対応している。

錫光との出逢い

地方出張のときに立ち寄った風情漂う老舗の寿司屋で、錫光の酒器と出逢った。

 

お店のカウンター席に座り、その日のオススメの魚を大将に握ってもらった。
握りのお供にと差し出された日本酒を、大将のお気に入りという錫製酒器で味わったのだ。
口に含んだ日本酒に 「う、うまい…!」 と、思わず言葉がこぼれた。

 

飲んだことのある銘柄であったが、以前よりもその味はとてもまろやかで、それでいて冷感のいき渡った日本酒は、鼻をスーッと抜けていった。

 

錫で作られた器は、高いイオン効果によってお酒の雑味を除いてまろやかな味わいにし、また熱伝導が良く温度を均一にするという、とっても優れた性質を持っていると、大将が教えてくれた。
※下記写真は、錫の溶液を鋳型に鋳込む様子

錫光との出逢い

その後、「ニッポン手仕事図鑑」の撮影を機に、あのとき飲んだ酒器の作り手である錫光 中村氏と出逢ったのである。

 

「手仕事っていうのは、自分で作るものですから。生み出す喜び、働く喜びがあります」

 

そう語ってくれたのは、錫工房、‟錫光”の2代目、中村圭一氏。
中村氏は、会社員から一転し、錫師の道を選んだ理由と、現在に至るまでの背景を話してくれた。

錫光が生まれたきっかけは

「錫光」は、圭一氏の父親、中村光山氏が1987年に錫製品専門の工房として創業した。

 

光山氏は15歳で錫の世界へ入り、東京入谷の錫万工房でその腕を磨いたそうだ。
当時は錫の需要も高く、仕事は途絶えなかったが、高度成長期に入るにつれて量産品が出回り、仕事量が減少した影響により、錫万工房は解散した。
しかし、錫師としての道を歩み続けるために、光山氏は‟錫光”を立ち上げたというのだ。

 

そして、ある日「現代の名工」に選ばれた先代光山氏からかけられた
「お前やらないか」
この言葉が圭一氏の転機となった。

 

もともと手作りが好きだったことから、圭一氏は錫師を継ぐことを決心し、サラリーマンを辞め錫の世界へと飛び込んだという。

錫光

錫師として働き始めた当時を、圭一氏はこう振り返る。

 

「全く違和感なく、すっと入ってきたんです。映像的に鋳込みのやり方とかタイミング、ろくろ挽きのリズムとか音とか、子供の頃の記憶が残っていて。それに自然と従っていました」

 

そして、錫光は創業から100年後の2087年までに、「現代の名工」の輩出を目指しているという。

 

先代光山氏から受け継がれた、ゆるぎない技術と錫への想いは、圭一氏の中にしっかりと息づいていることを感じたのであった。

 

私が体験したあの感動的な味を、ぜひご自身でも確かめていただきたい。
きっと私のように、誰かに勧めたくなるでしょう!
※下記写真は、先代から受け継いだ製法が書き記されたノート。

錫光
店主

ひとことめぐり商店店主堀内 哲

インテリア業界でCSや品質管理の責任者を務めたのち、バイヤーに転身。現在は、ひとことめぐり商店の店主として、日本の埋もれている逸品を発掘すべく精力的に活動している。

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